1.婚姻費用は、別居中の暮らしを支えるお金


婚姻費用とは、夫婦や経済的に自立していない子どもの生活を維持するための費用です。食費や住居費に加え、医療費や教育費なども含まれます。別居したからといって、生活費を分担する問題がなくなるわけではありません。
この記事では、夫が支払う側、妻が受け取る側で、子どもは妻と暮らしている場合を取り上げます。実際には妻が支払う側になることもあります。


2.夫の年収別・婚姻費用の月額目安


【以下の一覧の条件】
夫は給与所得者、妻の年収は0円。子どもがいる場合は全員0〜14歳で、妻と同居しています。特別な事情による調整をしていない、標準的な月額の目安です。

夫の給与年収300万円
夫婦のみ:月4〜6万円
子ども1人:月6〜8万円
子ども2人:月6〜8万円

夫の給与年収400万円
夫婦のみ:月6〜8万円
子ども1人:月8〜10万円
子ども2人:月8〜10万円

夫の給与年収500万円
夫婦のみ:月8〜10万円
子ども1人:月10〜12万円
子ども2人:月12〜14万円

夫の給与年収600万円
夫婦のみ:月10〜12万円
子ども1人:月12〜14万円
子ども2人:月14〜16万円

夫の給与年収700万円
夫婦のみ:月10〜12万円
子ども1人:月14〜16万円
子ども2人:月16〜18万円

夫の給与年収800万円
夫婦のみ:月12〜14万円
子ども1人:月16〜18万円
子ども2人:月18〜20万円

夫の給与年収1,000万円
夫婦のみ:月16〜18万円
子ども1人:月20〜22万円
子ども2人:月22〜24万円

裁判所の令和元年版算定表の表10・表11・表13をもとに整理しています。年収は額面です。金額は妻と子どもの生活費を合わせた月額で、子ども1人当たりの額ではありません。
たとえば、夫の給与年収が500万円、妻に収入がなく、8歳の子ども1人と妻が暮らしている場合は、月10〜12万円が目安になります。「必ず12万円もらえる」という意味ではなく、具体的な額は事情を踏まえて決まります。


3.妻にパート収入があると、金額は変わる?


妻の給与やパート収入も算定に反映されます。同じ夫の年収でも、妻の収入が増えると、夫の負担額は一般に小さくなります。

夫の給与年収500万円、子ども1人(0〜14歳)が妻と暮らしている場合、妻の給与年収0円では月10〜12万円、妻の給与年収100万円では月8〜10万円が目安です。いずれも裁判所の表11による標準額です。
「専業主婦だからこの額」「パートだからこの額」と一律に判断せず、自分の年収を横軸に当てはめて確認しましょう。


4.算定表は、この順番で読みます


①家族構成に合う表を選ぶ
婚姻費用は表10〜19です。子どもの人数と、0〜14歳・15歳以上の年齢区分で選びます。

②夫の年収を縦軸で探す
給与所得者と自営業者では使う目盛りが違います。

③妻の年収を横軸で探す
夫の年収から横に、妻の年収から上に進み、交わる位置の月額を見ると目安がわかります。

給与所得者は、原則として源泉徴収票の「支払金額」を使います。税金や社会保険料を引いた手取り額ではありません。賞与も含めた年間の額を確認します。
自営業者は売上をそのまま当てはめません。確定申告書の課税所得を出発点に、実際に支出していない控除などを加えて確認するため、給与年収と同じ額でも扱いが異なります。児童手当・児童扶養手当は、受け取る側の年収に含める必要はありません。


5.算定表の金額だけで決めにくい場合


算定表は、標準的な家庭の生活費を簡単に確認するための資料です。通常の生活費は金額の幅の中で考慮されていますが、特別な事情がある場合には個別の検討が必要になります。

たとえば、夫が妻の住む家の住宅ローンを払っている、通常より大きな医療費や教育費がかかる、子どもが夫婦それぞれと暮らしている、といった場合です。これらがあれば必ず増額・減額になるわけではありません。住居の利用状況、支払内容、合意の有無などを整理して確認します。
住宅ローンを払っているから婚姻費用は0円、学費は必ず全額別払い、と即断しないことが大切です。


6.夫が払わない・話合いができないときは


まず、夫婦それぞれの収入、子どもの年齢、生活費の支払状況を整理しましょう。源泉徴収票、給与明細、確定申告書、振込記録など、手元にある資料が役立ちます。夫の収入資料が手元になくても、確認方法を相談できます。

話合いがまとまらない、または話合いができない場合には、家庭裁判所に婚姻費用分担請求調停を申し立てる方法があります。調停で合意できなければ、審判で裁判官が判断する手続に進みます。
生活費の不足をひとりで抱え込まず、金額と請求方法を早めに整理してください。直接連絡することが怖い場合は、連絡方法も含めて相談できます。


自分と子どもの暮らしを、数字から考える


別居後の生活を考えるには、受け取れる可能性のある婚姻費用と、家賃・食費・教育費など毎月必要なお金を並べてみることが大切です。

算定表の目安を知ることは、今の不安を整理する第一歩になります。離婚するか決めていない段階でも、自分の場合の見通しを確認できます。

【参照資料】(2026年10月1日確認)
裁判所「令和元年版・養育費、婚姻費用算定表」表10・11・13
https://www.courts.go.jp/toukei_siryou/siryo/H30shihou_houkoku/index.html

裁判所「養育費・婚姻費用算定表について」
https://www.courts.go.jp/vc-files/courts/file5/setumei_84KB.pdf

裁判所「婚姻費用分担Q&A」
https://www.courts.go.jp/nagoya-f/vc-files/nagoya-f/file/syouteim-t27qa.H290531.pdf

裁判所「婚姻費用の分担請求調停」
https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_kazi/kazi_07_03/index.html

この記事は一般的な情報です。受け取れる金額や請求の可否は個別の事情によって異なります。

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